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【4杯目】浅煎り・深煎りって、何が違うの?

更新日:1月20日

■ 蔵三(くらぞう)

江戸時代の終わり頃、栃木県栃木市で生まれた喋る猫。明治の文明開化の折に初めて珈琲を口にし、その美味しさに感激して喋れるようになった。それ以来、珈琲の魅力に取り憑かれ、豆・焙煎・淹れ方まで何でも知っている。落ち着いた古風な口調で、珈琲のことを優しく教えてくれる。


■ 美里(みさと)

栃木市に住む20代のOL。仕事に少し疲れ気味だったある日、喋る猫の蔵三と出会い、珈琲の美味しさと、珈琲のある暮らしを知る。一杯の珈琲で気持ちが前向きになることを実感し、今では「もっと珈琲を知りたい」と蔵三に教わっている。


Illustration by 小日向真芽 様

 


前回のお話はこちら▶「焙煎すると、なぜ香りが出るのか


蔵の猫、珈琲の時間。

4杯目


浅煎り・深煎りって、何が違うの?


休日の朝。 カーテン越しの光が、いつもよりやわらかかった。

美里はテーブルの上に並んだ珈琲豆の袋を見比べながら、 小さく首をかしげた。

美里 「蔵三、この前から気になってたんだけど…… 浅煎りとか深煎りって、 正直、どう違うのか分からなくて」

蔵三は、縁側からゆっくりとこちらを見た。

蔵三 「うむ。 それは“焙煎の度合い”の違いであるが、 実はな、味の違いというより、表情の違いなのじゃ」

美里 「表情?」



浅煎りは、豆の声がよく聞こえる

蔵三 「浅煎りは、火を入れる時間が短い。 そのぶん、豆がもともと持っている個性が前に出る」

美里 「個性って?」

蔵三 「産地の違い、育った環境、 その豆が生まれ持った味わいじゃ」

果実のような酸味。 軽やかな口当たり。

蔵三 「浅煎りは、 “この豆は、こういう育ち方をした”と 正直に話してくれる珈琲である」

美里 「なんだか、ちょっと繊細そう」

蔵三 「うむ。 気分が慌ただしい時より、 少し余裕のある時間に向いておるな」



深煎りは、包み込む珈琲

美里 「じゃあ、深煎りは?」

蔵三 「深煎りは、しっかりと火を入れる。 苦味とコクが増し、香ばしさが前に出る」

美里 「安心する味、って感じがする」

蔵三 「その通りじゃ。 細かな違いよりも、 “珈琲らしさ”を感じやすい

深煎りは、 疲れた心を受け止めるような味になる。



どちらが好きかは、その日の自分次第

美里 「初心者は、どっちから始めるのがいいのかな?」

蔵三 「よく聞かれるが、 答えは一つではない」

美里 「えー、またそういうの」

蔵三 「ははは。 苦味が好きなら深煎り。 香りや酸味を楽しみたいなら浅煎り。 それでよい」

美里 「気分で選んでいいんだ」

蔵三 「むしろ、その方がよい。 珈琲は、正解を探すものではないからな」



美里の中で、選ぶ基準が変わる

美里は、ふとスマートフォンを置いた。

美里 「前は、“失敗しない選び方”ばっかり探してた」

蔵三 「今は?」

美里 「今日はどんな時間にしたいか、 それを考えるようになったかも」

蔵三は、満足そうにひげを揺らした。



もっと知りたい

美里 「でもさ、浅煎りって“酸っぱい”って聞くこともあるよね」

蔵三は、静かにうなずいた。

蔵三 「それはな…… “酸味”という言葉の誤解の話になる」




■蔵三からのひとことまとめ


・浅煎りは、豆の個性が出やすい焙煎

・果実のような酸味や軽やかさが特徴

・深煎りは、苦味とコク、香ばしさが前に出る

・どちらが良いかではなく、時間や気分で選ぶ

・珈琲は、その日の自分に合えばそれでよい


蔵三 「珈琲は、選び方を間違えても失敗にはならぬ。 ただ、次の好みが見えてくるだけなのじゃ」


今日の一杯が、 あなたの暮らしにそっと寄り添いますように。


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