【2杯目】アラビカとロブスタ、味の違い
- 店主・油屋

- 1月2日
- 読了時間: 4分
更新日:1月11日

■ 蔵三(くらぞう)
江戸時代の終わり頃、栃木県栃木市で生まれた喋る猫。明治の文明開化の折に初めて珈琲を口にし、その美味しさに感激して喋れるようになった。それ以来、珈琲の魅力に取り憑かれ、豆・焙煎・淹れ方まで何でも知っている。落ち着いた古風な口調で、珈琲のことを優しく教えてくれる。

■ 美里(みさと)
栃木市に住む20代のOL。仕事に少し疲れ気味だったある日、喋る猫の蔵三と出会い、珈琲の美味しさと、珈琲のある暮らしを知る。一杯の珈琲で気持ちが前向きになることを実感し、今では「もっと珈琲を知りたい」と蔵三に教わっている。
Illustration by 小日向真芽 様
前回のお話はこちら▶「珈琲豆ってそもそも何?」
2杯目
アラビカとロブスタ、味の違い

朝の空気が、少しだけ軽く感じられた。美里はカップを両手で包みながら、窓の外を眺めていた。
美里「蔵三、この前教えてもらった“珈琲豆は種”って話、なんだかずっと頭に残ってるんだよね」
蔵三「ほう、それは良い兆しである。珈琲は、気になり始めた時から、もう始まっておるのじゃ」
蔵三は、蔵の縁側で丸くなりながら、尻尾をゆっくり揺らした。
珈琲豆には、性格の違いがある

美里「それでね、もうひとつ聞きたいことがあって。アラビカとかロブスタとか、よく見るけど……正直、違いがよく分からなくて」
蔵三「うむ、多くの者がそこで立ち止まる。じゃが安心するがよい。その違いは、難しい知識ではなく、性格の違いなのじゃ」
美里「性格?」
蔵三「そうである。まずは、アラビカ種から話そう」
アラビカは、香りを楽しむ珈琲
蔵三「アラビカ種は、香りが豊かで、味わいが繊細。酸味、甘み、コクのバランスが良く、果実のような風味を感じることもある」
美里「なんだか、上品な感じだね」
蔵三「その通りじゃ。ゆっくり飲みながら、“あ、今いい香りだな”と思える珈琲が多い」
美里はカップに顔を近づけ、そっと息を吸い込んだ。
美里「……ほんとだ。香りだけで、気持ちが落ち着く」
ロブスタは、目を覚ます珈琲
美里「じゃあ、ロブスタは?」
蔵三「ロブスタ種は、苦味がしっかりしており、力強い。カフェインも多めで、“飲んだ”という実感がはっきり残る珈琲じゃ」
美里「朝に合いそう」
蔵三「うむ。目を覚ましたい時、集中したい時に向いておる。エスプレッソや缶コーヒーに使われることが多いのも、そのためじゃ」
どちらが正しい、ではない

美里「じゃあ、やっぱりアラビカの方がいい珈琲なの?」
蔵三は、少しだけ首を振った。
蔵三「“良い・悪い”ではない。その人の時間に合っているかどうかなのじゃ」
美里「時間に、合うかどうか……」
蔵三「忙しい朝、眠い午後、静かな夜。同じ珈琲が、いつも同じ顔をするとは限らぬ」
美里は、その言葉を噛みしめるように、もう一口飲んだ。
美里の時間が、少し変わり始めた

美里「前はね、珈琲って“眠気を飛ばすための飲み物”だった」
蔵三「今は違うのか?」
美里「うん。“今の時間を、大事にするため”に飲んでる気がする」
蔵三は、何も言わずに目を細めた。
次回への小さな余韻
美里「ねえ蔵三。焙煎すると、どうしてこんな香りが出るの?」
蔵三は、少しだけ間を置いてから答えた。
蔵三「それはな……豆が“変わる瞬間”の話になる」
その続きは、また次の珈琲の時間に。

蔵三「珈琲は、知れば知るほど難しくなるものではない。じゃが、知るほどに、うまくなるものなのじゃ」
■蔵三からのひとことまとめ
珈琲豆は、珈琲の実の中にある「種」なのじゃ
アラビカ種は、香りと味わいのバランスがやさしい
ロブスタ種は、苦味が強く、目を覚ます珈琲である
どちらが良い、ではなく、時間に合うかどうかが大切
珈琲は、今の自分の気分を映す飲み物でもある
今日のお話が、あなたの珈琲時間を少しだけ楽しくするきっかけになれば嬉しいです。
それではまた、次の一杯のお話でお会いしましょう。
次回は、「焙煎すると、なぜ香りが出るのか?」

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