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【#聴く珈琲_秋】8月


皆さま、このたびもたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

夏の終わりが近づき、朝夕の風にほんの少しだけ次の季節を感じる頃。

今回の #聴く珈琲 は、ひと足早く「秋」、そして「香り」をテーマに作品を募集しました。 珈琲と「香り」は、切っても切り離せないものです。けれど今回寄せられた作品を読んでいると、香りは単に「いい匂い」として描かれるだけではありませんでした。

遠い日の記憶を連れてくる香り。人と人をつなぐ香り。慣れない場所で緊張をほどいてくれる香り。そして、季節が移ろったことをそっと知らせる香り。

目には見えないからこそ、ひとたび記憶と結びつけば、時間も距離も軽々と越えてしまう。 そんな「香り」の不思議さを、それぞれ異なる角度から感じさせてくれた作品たちでした。

それでは、#聴く珈琲 8月分の選考結果を発表いたします。


▶8月の結果はコチラ「【#聴く珈琲_秋】8月


〇最優秀賞

金木犀は知っている」  作:紫冬湖 様

秋晴れの空、金木犀の香り、そして友香と飲む缶コーヒー。何気ない放課後のようでいて、その時間には卒業と別れが静かに近づいています。 「寂しい?」と尋ねられても素直になれず、無理して飲んだコーヒーを「苦かった」と感じる場面が、とても印象的でした。珈琲の苦味が、言葉にできなかった寂しさそのもののように感じられます。 そして数十年後、二人を再び包むのも、あの頃と同じ金木犀の香り。少女だった二人が大人になり、今度は珈琲の味について笑い合える結末に、流れた年月の長さと変わらない友情の両方を感じました。 「秋」と「香り」という今回のテーマが物語の核にあり、さらに珈琲の味覚まで感情と結びついています。 香りによって過去と現在が重なる構成も美しく、短い作品の中に一つの人生の時間を感じさせてくれる作品でした。



〇油屋賞

アン・カフェとお手紙」  作:浜風 帆

パリへ留学した孫と、日本で暮らすお婆ちゃん。その距離を一通の手紙と食べ物、そして珈琲が優しくつないでいく作品です。 銀杏並木、焼き栗、朝市、ワイン、そしてパリのカフェで飲むエスプレッソ。読んでいるだけで景色や香りが次々と立ち上がり、遠く離れた二つの土地の空気まで感じられました。 特に好きだったのは、お婆ちゃんから届いた手紙を読んだあと、主人公が街角のカフェで珈琲を頼むラストです。目の前にいるわけではないのに、その一杯を介して自然とお婆ちゃんの姿が浮かんでくる。 会話が多くテンポも良いため、声にしたときにも人物の表情や温度が伝わってきそうな作品でした。私も「ボンジュール」と言いたいです。 結末まで読んだ後に「私も久々に手紙を書こうかな」と温かく思わせてくれる、秋の日に珈琲を片手に聴きたくなる一篇として、油屋賞に選ばせていただきました。



〇優秀賞(順不同)

知らない場所、よく知る香り」  作:細雪 様

教育実習初日という、誰もが少し身構えてしまうような「知らない場所」から始まる物語。そこで主人公を迎えたのが、職員室から漂ってくる「よく知る珈琲の香り」でした。 緊張していた心が、香りによって一瞬だけ母校の記憶へ戻っていく。その感覚がとても自然に描かれています。 知らない景色の中に、ひとつだけ自分の知っているものがある。それだけで人は少し安心できるのだと感じさせてくれました。自分の母校を思い出して、「あー、そういうば珈琲の香りがしていたなあ」と思わず懐かしくなりました。 そして最後には、その香りのする場所から「よかったら一杯どうですか?」と声をかけられる。最初は外側にいた主人公が、少しだけその場所へ迎え入れられたようにも感じます。 タイトルが読み終えたあとにもう一度効いてくる、珈琲の香りの「安心感」を丁寧に描いた作品でした。


名画の香り」  作:如月恵

運河沿いの美術館と珈琲店という舞台から、「香り」と「記憶」を知的に結びつけた、とても個性的で芸術の秋を感じる作品でした。 名画を鑑賞した記憶が、珈琲の香りをきっかけに再び浮かび上がってくる。その発想が今回のテーマに対して非常に面白く、ほかの作品とはまったく違った「香り」の描き方です。 香りは形として残すことができないのに、ある瞬間の景色や感情を驚くほど鮮明に呼び戻してくれるものでもあります。 美術作品と珈琲という、一見離れている二つのものを「記憶」という一点で結びつけた構成に惹かれました。 珈琲の香りを嗅いだとき、自分ならどんな景色を思い浮かべるだろう。そんなことまで考えたくなる、余韻のある作品です。



おわりに

今回の作品を読み終えて改めて感じたのは、「香り」はとても物語と相性がいいということでした。

金木犀から学生時代を思い出したり、珈琲の香りから母校や家族を思い出したり、名画の記憶が蘇ったり。そこに存在していないはずの人や景色が、ひとつの香りによって突然目の前へ帰ってくる。 そして、それは珈琲にもよく似ています。 豆を挽いた瞬間の香り。お湯を注いだときに立ち上がる香り。昔よく通った店の香り。誰かが淹れてくれた珈琲の香り。 珈琲そのものの味を忘れてしまっても、「あのとき、あの場所で飲んだ」という記憶だけは、不思議と長く残っていることがあります。

今回も、それぞれの作者だからこそ書ける「一杯」を楽しませていただきました。


夏から秋へ。

季節が変われば、珈琲の楽しみ方も少しずつ変わっていきます。

冷たい珈琲を求めていた日々から、湯気の向こうに香りを楽しむ季節へ。

そして #聴く珈琲 も、また次の一杯へと続いていきます。

作品を書いてくださった皆さま、そして読んで、聴いてくださっている皆さま、今月も本当にありがとうございました。

次はどんな物語と、どんな珈琲に出会えるのでしょうか。


また次の #聴く珈琲 で、お会いしましょう。☕️



サポートメンバー:Yuki様

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