【#聴く珈琲_春】2月の感想
- 店主・油屋

- 1 日前
- 読了時間: 4分
2月は本当に、読み応えのある作品が多い月でした。
前回より2倍の作品数が集まりました。
春を目前にした空気、少し残る冬の匂い、そして“始まり”の気配。
珈琲という飲み物が、こんなにも多様な物語を抱きしめるのかと、改めて感じさせられました。
▶2月の結果はコチラ「【#聴く珈琲_春】2月」

〇最優秀賞
「父の背中と珈琲と」 作:北大路京介様 @princekyo
読み終えたあと、静かに深呼吸をしたくなる作品でした。 珈琲を淹れる所作。 豆を量り、湯を沸かし、ゆっくりと注ぐ。 その一連の動きの中に、“父”が宿っている。 言葉は多くない。けれど、背中が語っている。
味の記憶は、人の記憶と結びついている。 そしてその記憶は、人生の節目でそっと支えになる。 3月、新生活が始まる季節。 多くの人の背中を押してくれる一作だと思い、最優秀賞に選ばせていただきました。 朗読になったとき、この“間”と“余白”がどう息づくのか。是非皆さまも聞いてみてください。
〇油屋賞
「満たし、包んで」 作:細雪 様 @lightsnow95
物語の舞台は、書くことと珈琲。 キーボードの音、印刷機の音、カップを置く音。 生活音の重なりが、そのまま心の鼓動になっているようでした。 「書く」という行為と、「珈琲を飲む」という行為。 どちらも、心を整えるための時間。 私自身も創作活動をしていながら夜明けまで没入するときがありましたので、その時間特有の窓の外の景色や音、寒さを思い出し、油屋賞に選ばせていただきました。この作品は、 “創作と日常が溶け合う瞬間”を丁寧に掬い上げていました。 珈琲は、孤独を深めるものではなく、 自分を優しく包むための存在でもある。 静かな強さを感じた一作です。
〇優秀賞(順不同)
「鈴の残る朝」 作:木南木一 様 @konan_kiichi
朝の光、琥珀色の珈琲、そして告白。 春の空気がまっすぐに差し込むような作品でした。 「今日からって言ってなかったっけ?」 何気ない会話の中にある緊張と希望。 珈琲の透明感が、そのまま物語の透明度になっている。 読後、胸の奥が少し温かくなる。 新しい一歩を踏み出す物語として、とても印象的でした。
「春の日の思い出」 作:黒猫 様 @bxZDpN3kNc42787
「この人」と「私」と「あの人」。 三つの存在が交差しながら、恋の温度差がとても繊細に描かれた作品でした。 好きだと思うたびに揺れる心。 向き合っている相手と、心に残る相手。 そのズレが、桜の景色や珈琲の苦味に重なり、言葉にしきれない感情をそっと浮かび上がらせます。 誰も強くぶつからない。 けれど確かに切ない。 春という季節のあわいにある、微妙な心の距離を丁寧にすくい取った一作でした。
「雪解けがてら」 作:なつめすい 様 @natsume_sui8
給湯室という何気ない日常の舞台で描かれる、先輩後輩の距離感。 そのもどかしさを、珈琲の淹れ方の違いに重ねた構成が印象的でした。 仕事上の立場と、心の揺れ。 守ろうとする線引きと、こぼれそうになる感情。 「雪解け」の比喩が物語全体をやさしく包み込み、 不器用さの中にも確かな春の気配を感じさせてくれます。 苦味の奥にある芽吹きを、静かに描いた一作でした。
「思いやり香る如月」 作:シャブラン 様 @shablan_ch
この作品は、“甘さ”の解釈が印象的でした。 バレンタインというイベントを軸にしながらも、 焦点は「贈ること」よりも「想うこと」にある。 珈琲のチョコレートのような風味と、 誰かを思う気持ちを重ねる表現が巧み。 やさしさは、声に出さなくても伝わる。 そんな余韻を残してくれました。
「はじめてのコーヒー」 作:影畑凛星 様 @prism_magica
“初めて”というテーマは、いつも難しい。 しかしこの作品は、背伸びと好奇心、 そして少しの大人への憧れを丁寧に描いていました。 珈琲は苦い。 でも、その苦味の奥にある世界を知りたくなる。 成長の入口に立つ瞬間を、瑞々しく描いた一作です。
おわりに
今月は、「家族」「始まり」「思いやり」というキーワードが多く見られました。 冬の終わりと春の気配。 そのあわいに立つ物語たち。 珈琲は、 誰かを思い出すための飲み物であり、 自分を整えるための飲み物であり、 背中を押してくれる飲み物でもある。 そんなことを、改めて教えてもらった2月でした。 たくさんのご参加、本当にありがとうございました。 3月もまた、 珈琲とともに、物語をお待ちしています。
そしていつか、一年分の言葉が並ぶ本棚を、想像しています。
サポートメンバー:Yuki様

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