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【#聴く珈琲_春】1月の感想

更新日:4 日前

1月の「#聴く珈琲」には、店主として想像していた以上に、

静かで誠実な作品が集まりました。


日々、珈琲を焙煎し、淹れ、差し出す側にいると、

「珈琲そのもの」よりも、「珈琲のそばで過ごされる時間」のほうが、

強く記憶に残る瞬間があります。

今月届いた作品群は、まさにその時間を言葉にしてくれていました。


味や産地を語らずとも、湯気、体温、朝の空気、立ち止まる気持ちが描かれている。

それは、店で誰かがカップを手に取る一瞬とよく似ています。

1月という季節も相まって、無理に前へ進まず、

少しほどけることを許す作品が多かったことは、企画の始まりとしてとても象徴的でした。


店主として、この企画を立ち上げて良かったと、静かに実感しています。



▶1月の結果はコチラ「【#聴く珈琲_春】1月




〇最優秀賞

「ほどける」  作:Hiroki様 @Hirokipv5x

店主としてこの作品を読んだとき、真っ先に浮かんだのは「この時間に、うちの珈琲を置きたい」という感覚でした。猫の体温、冬の朝、湯気、指先の感触。そのどれもが、店で日々感じている“説明できない良さ”と重なります。

この作品の強さは、語らないことを選び続けている点にあります。焙煎でも同じですが、手を入れすぎると、素材が持っている良さは失われてしまう。「ほどける」は、ちょうど良い距離で火を止めた一杯のようでした。

読み終えたあと、気持ちが少し緩む。その変化はとても小さいのに、確かです。音声化を一作に絞るにあたり、この作品を選んだ理由もそこにあります。声が前に出すぎず、生活の中に溶け込む。その在り方は、焙煎店として届けたい“聴く珈琲”そのものでした。



〇油屋賞

「残り香のシャッター」  作:木南木一 様 @konan_kiichi

この作品を読んでいると、なぜか懐かしい風景と空気を思い出します。シャッターが下り、音が減り、人の気配が薄れても、なぜか消えない珈琲の匂い。その「残り香」にこそ、時間の重なりがあります。

珈琲は、飲み終えたあとに本番が来る飲み物だと思っています。この作品は、その感覚をとても自然に言葉にしていました。語られない背景が多いからこそ、読み手自身の記憶が入り込む余地がある。店でカップを返すとき、少しだけ立ち止まるあの間と、よく似ています。

派手さよりも、確実に心に残る一編でした。油屋賞として選んだのは、焙煎店としての時間感覚と、最も近いところにあったからです。



〇優秀賞(順不同)

「無題」  作:金木犀様 @L7jbX3KXhO62963

会話を軸にしながら、大人という言葉の曖昧さを丁寧にすくい取った作品でした。答えを出さないまま終わる構成が、テーマとよく噛み合っています。珈琲は脇役でありながら、場の空気を支える存在として機能していました。


「はじまりの睦月」 作:シャブラン様 @shablan_ch

1月という時間の感触を、生活の細部から描いた一編です。始まりの月に特有の少し硬い空気感がよく表現されていて、読んでいて気持ちの良い世界でした。日常の中にある“まだ慣れない感じ”が印象に残ります。


「空き缶」  作:細雪様 @lightsnow95

余白と孤独を、軽やかな筆致で描いた作品でした。空き缶というモチーフが、飲み終えたあとの時間や、これからの選択を象徴しており、短いながらも読後に残る広がりがあります。


「始まりのひとくち」  作:まなゐ様 @campanula0613

最初の一口にすべてを託した構成が印象的でした。珈琲を飲む行為そのものが、気持ちを切り替えるスイッチになっており、新社会人らしい初々しさと先輩との会話がとても素直です。読んでいて自然と背筋と呼吸が整うような作品でした。



おわりに

1月の作品群を通して感じたのは、「珈琲を飲む」という行為が、誰かの物語を始めたり、立ち止まらせたり、そっと終わらせたりする力を持っているということです。

2月も同じテーマで募集は続きます。今月寄せられた作品たちが、また別の誰かの朝や夜に静かに寄り添っていくことを願っています。

そしていつか、一年分の言葉が並ぶ本棚を、想像しています。



サポートメンバー:Yuki様

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